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基調講演Keynote speeches

1日目 9月14日(土) 9:15-11:001H201教室
歴史に反する島々?日本列島の初期グローバル化

9:15-10:00講師:マーク・ハドソン氏

前近代の日本はユーラシアでも最も孤立した地域であったが、日本の歴史を理解するためには、この列島で起きた多くの社会的・環境的変化について、より広い「グローバルな」視点から検討する必要がある。今回の講演では、前近代の日本の歴史におけるこうした2つの明らかに矛盾する特徴について、縄文時代後期から17世紀までを例に取り上げて論じてみたい。

ジェームズ・スコットは青銅器時代から紀元後1600年ごろまでを「野蛮な人々の黄金時代」と呼んだ。この時代には、非国家社会は交易において経済的に優位に立つことができたため、農耕国家とほぼ対等な関係を持つことができた。私はこのプロセスを「二流の人々の革命」と呼んだことがある。

国家から逃れることは、山岳地帯やアクセスしにくい土地では比較的容易であり、その点において日本は、ユーラシア青銅器時代(縄文時代後期がこれに相当する)から1630年代に始まる鎖国までは、「野蛮な人々の黄金の島」であったに違いない。

この長い期間、日本列島の多くの集団は農耕の拡がりに抗い、山や海を拠り所にして交易や海賊行為をおこなってきた。最終的には沖積地の農耕の方に軍配が上がったことは間違いないが、農耕に対する根強い抵抗はほかのどこよりも長く続いた。

講師紹介

マーク・ハドソン氏

マーク・ハドソンMark Hudson

マックスプランク人間歴史科学研究所(ドイツ・イェーナ)Eurasia3angleプロジェクト研究員。また、リヨン高等師範学校東アジア研究所研究員。おもな著作に“Ruins of Identity: Ethnogenesis in the Japanese Islands”(ハワイ大学出版、1999年)。共編著として“Multicultural Japan: Palaeolithic to Postmodern”(ケンブリッジ大学出版会、1996年)、“Cambridge World History of Violence”第1巻(ケンブリッジ大学出版会、近刊)。主な研究領域は日本列島の考古学と環境人文学。
「日本を解き放つ—3点測量の日本文化論へ」

10:00-10:45講師:小林康夫氏

日本哲学の研究者であるトマス・カスリスの日本文化論『Intimacy and Integrity』への応答から出発して構想された中島隆博との共著『日本を解き放つ』(本年1月刊行)を踏まえて、そこでわれわれが採用した「三点測量」の方法によって、日本の文化を世界のマクロ・パースペクティヴのなかに置き直し、そうすることでそれを世界へと解き放そうとする試みについて報告します。

その本では、わたし自身は、空海の「声字実相義」に依拠しつつ、「コトバ(空海)」・「カラダ(世阿弥)」・「ココロ(漱石)」という三つの層を論じることで、日本文化の通時的なマクロ・パースペクティヴを提出しようと試みました。

その後に、戦後の作曲家・武満徹の創造においても、日本音楽・西欧音楽・バリ島の音楽というまったく異なった三つの音楽が開く「面」の地平が、真摯に、探求されていることを見届けました。そこに、「情報テクノロジーに支えられたグローバル資本主義が世界をおおい尽くすこの時代に、人文科学あるいは文化研究は、どのようにあるべきか?」という切迫した問いに対する、ひとつのヒントが見出されないか、と願っています。

講師紹介

小林康夫氏

小林康夫Yasuo Kobayashi

1974年東京大学教養学部卒業後、同大学院人文系比較文学比較文化専攻修士修了。パリ第10大学テクスト記号学科博士号取得。東京大学大学院総合文化研究科教授を経て2015年4月より青山学院大学院総合文化政策学研究科特任教授。

専門は、表象文化論、現代哲学、フランス現代文学、現代思想。2003年より15年まで東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学研究センター」(UTCP)拠点リーダーをつとめた。2002年フランス政府・学術教育功労賞シュヴァリエ受賞。

著書に『不可能なものへの権利』、『無の透視法』、『起源と根源』、『大学は緑の眼をもつ』、『光のオペラ』、『思考の天球』、『身体と空間』、『建築のポエティクス』、『青の美術史』、『創造者たち』、『出来事としての文学』、『Le cœur/la mort』、『表象の光学』、『知のオデュッセイア』、『歴史のディコンストラクション』、『こころのアポリア』、『存在のカタストロフィー』、『ミケル・バルセロの世界』、『新「知の技法」入門』、『肉体の暗き対象——オペラ日本戦後文化論Ⅰ』、『絵画の冒険』など、編著書に『知の技法』『知の論理』『知のモラル』『新知の技法』『文学の方法』ほか、訳書に『ミシェル・フーコー思考集成』(共編訳)、リオタール『ポスト・モダンの条件』、デュラス『緑の眼』、レヴィナス『他者の倫理』、リオタール『インファンス読解』(共訳)、デリダ『名前を救う』などがある。

なお、最新著は、『君自身の哲学へ』(大和書房)、『表象文化論講義 絵画の冒険』(東京大学出版会)。
ディスカッション

10:45-11:00

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